【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 ――そのときが来たら、ハンナ……あなたはどんな顔をするのでしょうね。

 ルイスは無意味にもそんなことを考えながら、顔に笑みを張り付ける。

「あなたの忠誠心、感服致しました。私も見習いたいと思います」
「ええ、ぜひ見習っていただきたいですわ! ――って、見てください! 買い物が終わったみたいですよ!」

 ハンナが指差す先には、店の奥から出てくるアメリアとウィリアムの姿。

 ほくほく顔のウィリアムに、満面の笑みを浮かべる店員。どことなく困ったような顔のアメリア。――手ぶらではあるが、どうやらずいぶん多くの品を買ったようだ。

「……いったいいくら使ったんでしょうね、あれ」

 ルイスが呆れたように呟くと、ハンナは店員と同じく満足げな笑みを浮かべる。

「侯爵家ともなれば、財産は底知らずでしょう?」
「まぁ……否定はしませんが」
「なら問題ありませんわ! さあ、尾行再開ですわよ、ルイス!」
「はぁ。わかりましたから、腕を引っ張るのはやめてください。袖が伸びます」
「あら、組んだ方が良かったですか? それとも手をつなぎます?」

 ハンナのからかうような声に、一瞬硬直するルイス。
 彼は数秒考えて答える。

「……組む方で」

 こうして二人は腕を組みカップルに擬態すると、再び主人らの後を追いかけた。
< 55 / 121 >

この作品をシェア

pagetop