【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
第3章 再会
1.疾走
「――まったく!」
ルイスは、アメリアを追って路地裏を駆け抜けていた。
ウィリアムとアメリアを尾行していたハンナとルイスは、突然走り出したアメリアの姿を目撃していた。
加えてルイスは、アメリアが走り出す直前に何を見ていたのかにも気付いていた。
アメリアが見ていたもの――それは、一人の少年がスリを働くその瞬間。
ルイスは、アメリアがそれを見た瞬間の、大きく見開かれた目を見逃さなかった。それは驚愕と、悲しみに満ちた瞳。――同時に路地裏に身を隠す少年、それを追うアメリア。
そんなアメリアの行動にルイスは確信した。あの少年は、アメリアの知り合いなのだろうと。
「アメリア様は私が! あなたはウィリアム様と合流してください!」
ルイスはハンナにそれだけ告げると、路地裏を駆け出した。
けれどアメリアの足は予想以上に速かった。あの細い足でいったいどうしたらそんなに速く走れるのかというほどに。
きっとアメリアはこの街をよく熟知しているのだ。どこをどう通ったらどこに繋がるのか――それ故迷いが無いのである。
しかしそれはルイスとて同じこと。
ではなぜルイスがアメリアに追いつけないのか。それはルイスの体力に理由があった。
十五分ほど走ったところで、ルイスの速度が極端に落ちてくる。肩は大きく上下し、額から噴き出る大量の汗。――その顔色は、まるで病人のように青白い。
それでも彼はしばらく走り続けたが、結局は足を止めざるを得なかった。
これ以上走れば身体が持たない――そう悟った彼は、仕方なく体を壁に預ける。