【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
「――は……っ」
気付けば路地幅は細くなり、人がギリギリ行き違えるかどうかというほどになっていた。
それに建物は高く、空は狭い。太陽の恩恵は少なからず受けられているが、それも今が真昼だからだ。少しでも日が傾けば、ここはすぐに暗闇に包まれるであろう。
「……最悪だな」
ルイスは自分の動かなくなった足を睨むように見つめ、苦々しげに悪態をつく。
それは誰に対してか――この状況に対しての言葉なのか。
少なくとも、ルイスの眉間に寄せられた皺が強い苛立ちを表していることは確実だ。
「……べネスは……」
ルイスは天を仰ぐ。――が、すぐに諦め顔を伏せた。
このような狭い場所では、べネスは降りてこられない。
「せめて開けた場所があれば……」
仕方なく、ルイスはゆっくりと歩き出す。
けれどそんな都合のいい場所が簡単に見つかるはずもなく。
そもそも、この辺りに開けた場所はないと記憶している。一度大通りへ戻らない限り、べネスを呼ぶことは不可能だろう。
「……仕方ない」
ルイスは周囲をぐるりと見まわして、誰の気配もないことを確かめる。
そしてゆっくりと目を閉じた。
自身の視界を遮断し、どこか上空を飛んでいるはずのべネスに意識を集中する。べネスの意識に、自身の意識を介入し――その視界を自分のものとするのだ。
そして次にルイスが目を開けたとき彼の瞳に映ったのは、スリの少年と対峙するアメリアの姿だった。