【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
「彼がお前に何と指示したかは知らないが、俺は今すぐ行かなければならない。話なら後でいくらでも聞く。だからそこを退け、コンラッド」
そう言って、ウィリアムはあからさまな敵意をコンラッドに向けた。
けれどコンラッドはそんなウィリアムの視線など気にも留めず、穏やかな顔で答える。
「悪いが行かせるわけには参らんのだ。それが殿下のご命令なのでな」
「…………」
コンラッドの返答に、ウィリアムは眉をひそめた。行かせられない、という言葉の真意を測りかねて。
「なぜだ、俺がここを離れると不味い理由でもあるのか?」
ウィリアムは声を低くする。
すると、コンラッドは肩をすくめた。
「貴殿をお守りせよ――と命じられている」
「なんだと?」
守る? 俺を? いったい何から……? ――まさか。
「アメリアが追った少年がスリだと、知っていたのか⁉」
「まぁ、端的に言えばそういうことになる。――だから貴殿はここで待たれよ。アメリア嬢はこちらで捜し出して連れ帰る」
「――ッ」
そう言ったコンラッドの瞳は、有無を言わせぬ重みを放っていた。
ウィリアムは言葉をのみ込んで、瞼を伏せる。しかし――。
「駄目だ。協力には感謝するが、彼女は俺の婚約者。俺も共に探す」
再び顔を上げ、はっきりと言い放った。――コンラッドの眉がピクリと震える。
「ハッ……! まったく、あの方のわがままにも困ったものだが、よもや貴殿までそのようなことを言い出すとはな! そのように冷静さを欠いた発言、貴殿の言葉とは思えんな。いやはや、貴殿も愛するご婦人の前では、一人の愚かな男だった、というわけか」
「だったら何だと言うんだ。彼女に何かあったらどう責任をとる。ただで済むとは思うなよ」
「まるで子供のようなことを仰いますな。アメリア嬢は自ら危険に飛び込んでいったようにお見受けしましたがね。そしてその手を掴まなかったのは貴殿でしょう。我らには何の責もございますまい」
「――ッ!」
「にしても、なるほど、悪女の名は伊達ではなかったということですかな。難攻不落と称される貴殿をこれほど夢中にさせるとは……殿下が興味を持たれるのも必然か」
ふむ――と、まるで感心するかのように考え込むコンラッド。
その発言に、ウィリアムの顔が歪む。
「……貴様、彼女を侮辱しているのか……?」