【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
「なあ、ルイス。お前はこの状況の理由を知っているんじゃないのか? なぜアーサーがこんなことをするのか、何か心当たりがあるんじゃないのか?」
「…………」
「知っていることがあるなら教えてくれないか。なぜアーサーが俺たちを監視しているのか、なぜあいつが俺を守ろうとするのか……」
「守る? あなたを?」
「そうだ。コンラッドが言っていた。〝俺を守る〟ように、アーサーから命を受けたと」
「…………」
「お前は俺に隠していることがあるんじゃないのか? その秘密に、俺やアメリア……そしてアーサーがどう関わっている? 今回、俺たちの前にスリの子供が現れたことは、偶然か?」
「…………」
ウィリアムの問いかけに、ルイスはとうとう黙り込んだ。
何も知らないはずがない。全ての元凶は自分なのだから。
けれど、それをウィリアムに知られるわけにはいかなかった。――ルイスは微笑む。
「……そうですね。心当たりは大いにあります。僕はアーサー様に喧嘩を売ってしまいましたから。彼は僕を恨んでいるんでしょう」
「喧嘩を売った? ……いったい、どんな――」
「僕があなたをそそのかし、アーサー様の名誉を汚した、ということです。きっとそのことをお怒りなのでしょう」
「――っ⁉」
告げられた内容に、ウィリアムは困惑する。
「お前が俺をそそのかし、アーサーの名誉を汚した? それはいったいどういうことだ、もっとわかるように説明しろ」
「……わかりました、説明致します。――が、少々長くなりますので、屋敷に戻ってからでもよろしいでしょうか?」
「…………」
そう言ったルイスの瞳はどこか悲しげで、ウィリアムはそれ以上何も言えなくなった。
本当は今すぐ説明させたいと、そう思っていたにもかかわらず、それ以上言葉が出てこなかった。
――あぁ、自分のあずかり知らぬところでいったい何が起きている? アーサーとルイスの間に、いったい何があったというのか。
ウィリアムはルイスの視線を受け止め、唇を結ぶ。アメリアを無事連れ戻し屋敷に戻ったら全てをはっきりさせよう――そう心に決め、頷いた。
「わかった。屋敷に戻ったら全て話してもらう」
「ご理解いただけて何よりです。――では、そろそろ路地を出ましょう。人の気配がなくなった、移動するなら今です」
ルイスはそれだけ言い、踵を返し走り出す。
ウィリアムはそんなルイスの背中を追って、一拍遅れて駆け出した。