【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
ライオネルは髪飾りにそっと手を触れる。
そしてそれが太い血管にまで達していないことを確かめると、太ももからゆっくりと引き抜いた。
同時に、気絶したままの少年が一瞬呻く。血はほとんど出ないけれど、痛いものは痛いのだろう。
ライオネルは少年が目を覚ます様子がないことを確認し、髪飾りに付いた血をコートの裾で拭い去った。
するとすぐに、それが普通の髪飾りでないことに気が付く。
――どうしてこんなに鋭いんだろう。
そう、先端が普通のものより明らかに尖っているのだ。まるで、何かを突き刺すために意図的に磨き上げられたかのように。
「……君は、いったい……」
ライオネルは髪飾りを握りしめる。いまだ意識を取り戻さないアメリアをじっと見下ろし、瞼を細めた。
二ヵ月前に彼女と初めて会ったとき、確かに抱いた違和感。その正体が、彼の中で確かなものに変わっていた。
声が出なくなっても動じなかったにもかかわらず、ガラスで手を切ったときは酷く怯えた様子で泣いていた。そんなアンバランスなアメリアに違和感を覚えていたのだと、彼はようやく確信した。
加えて、この先の尖った髪飾り――。
こんなものを持ち歩かなければならない理由が、彼女にはあるのだろう。