【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
「どうして皆……君を悪女だなんて言うんだろう」
〝これは口止め料だ〟――ウィリアムのあの言葉が、何度も脳裏に繰り返される。
彼はその意味をよく理解していた。けれどどうしても気になって、二人の噂を聞いて回ってしまった。そして、またこうしてアメリアと出会ってしまった。
「……僕は、どうしたらいいんだろう」
じき仲間がやってくる。
だがそのとき自分は、アメリアと他人の振りをしなければならないのだ。彼女とは初対面であるように振る舞わなければならないのだ。
そのことが、彼の心を酷く憂鬱にする。
「アメリア。ねぇ、起きてよ」
ライオネルは再びアメリアの頬に手を触れた。
すると、アメリアの瞼がピクリと動く。
「――っ、アメリア……、アメリア!」
「……っ」
その声に応えるように、アメリアの瞼がゆっくりと開いた。
その瞳は虚ろだったが、深刻な状態ではなさそうだ。ライオネルはひとまず安堵する。
「良かったよ、気が付いて」
「……?」
すると、かすかに動揺を見せるアメリア。
どうしてあなたがここにいるの――と、彼女の瞳が驚きに揺れた。
「僕、任務で君を捜していて。まさか君のことだとは思わなかったんだけど……。あぁ、でも、本当に無事で良かったよ……!」
肺から大きく息を吐き出して、泣き出しそうに微笑むライオネル。
その真摯な眼差しに、アメリアは何を思ったか――ライオネルから顔を逸らし、地面から身体を起こそうとする。
「駄目だよ! まだ動かない方がいい。君、さっきまで首を絞められていたんだよ」
「…………」
けれどアメリアは、ライオネルの制止も構わず上半身を持ち上げた。そうして、怪我の具合を確かめるかのように、自身の首に手を当てる。
アメリア本人は見えていないだろうが、そこにはくっきりとした指の痕があった。
それがあまりに痛々しくて、ライオネルは思わず目を逸らしかけた。――けれど、それ以上に気にかけなければならないことがあると、アメリアを見据える。
「僕……君にどうしても聞きたいことがあるんだ」