【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 ヘンリーの父親、アルデバラン公爵。僕の――伯父。
 公爵には三年前、この王宮から何人も追い出す際にずいぶんと世話になった。その恩があるから、決して無碍(むげ)にはできない。けれど……。

「そんな顔するなって。君の言うことはよく当たるから、頼りにしてるんだよ」
「……うん」

 わかっている。これも全て自分の蒔いた種だ。そうしたのは彼だけど、それでも僕がしたことには変わりはない。
 それに公爵は決して悪い人ではない。誰かを(おとし)めようという(たぐい)の心は全く持っていないのだ。ただ、ひたすらに強欲なだけ。

 それが僕に牙を剥くことはないだろう。周りを傷つけることも、しばらくの間はないであろう。
 公爵は(したた)かな男だ。けれどいつだって、正当性のある(けつ)を下す。
 だから彼は公爵をここに残したのだろうし、三年前、公爵に協力を頼んだのだろう。

 僕は顔を上げて、無理やり笑顔を作り出した。

「わかった、来週にでも」
「そうか、良かった! 父上に伝えておくよ」

 ヘンリーは太陽のように笑う。本当に眩しい笑顔。――でも。

「来月から、だよね。学校……」

 そう。彼は来月、寄宿学校(パブリックスクール)に入学する。しばらくの間、会えなくなってしまうのだ。

「僕……寂しいよ」
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