【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
それ以上何も言えないライオネルに、再び手帳を見せるアメリア。――そこには。
「――っ」
瞬間、ライオネルは憤る。
「この子を側に置く? 駄目に決まってるだろう! 殺されそうになったことを理解していないのか⁉ この子の仲間は、さっきの男のように危険な奴らなんだぞ! 何があるかわからない!」
ライオネルは今度こそ――自分の感情を押し殺すことができず――アメリアの肩を掴んで戒める。
「アメリア、君はこの子とどういう関係なの? 君は伯爵家の娘だろう? それなのに、あんな……あんな髪飾りを持ち歩いたりして……」
ライオネルの顔が歪む。
このままアメリアをこの少年と共にここに残し立ち去るなど……アメリアがこの少年を側に置き、彼の世話をするなどと、決して受け入れられるはずがない。そんなことを認められるわけがない。
それは騎士団の一員としてなのか、たった二日であったがアメリアの友人のように過ごしたあの日の自分のせいなのか、あるいはもっと別の感情なのか、彼自身にもよくわからなかった。
けれどそのどれかが、あるいはその全てが、アメリアのしようとしていることを強く否定していることは事実だった。
「無理だよ。僕には聞けない。この子供は、警備隊に引き渡す」
ライオネルは少しも引く気を見せず、アメリアを見据える。
すると、さすがのアメリアも諦めたのか。悲しげに俯いて――再びペンを取った。
『そうよね、ごめんなさい。あなたの言うとおりよ。――でも、これだけは聞いてほしいの』
「……何?」
『首を絞められたことは誰にも言わないで。特に、ウィリアムには絶対に。心配をかけたくないの』
「……っ」
その言葉に、ライオネルは目元を引きつらせた。
小切手を突き付けられたときの、ウィリアムの不愉快極まりない態度を思い出したからだ。
――君は、あの男を本心から慕っているのか……?