【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 ふと、そんな疑問が湧き上がる。

 今のアメリアの態度から、彼女がウィリアムを想っていることは明白だった。

 けれどそれでも、ライオネルにはウィリアム・セシルという男のどこがいいのか理解できなかった。ルイスや自分に対するあの横柄な態度が、たとえ貴族として当然のことであるとしても、人間性を疑わざるを得なかった。

 だがそんなことを伝えるわけにもいかず、彼はしばらくの間沈黙する。そして、仕方なく頷いた。

「……わかった、約束する」

 すると、アメリアはようやく安堵の表情を見せた。
 その裏表のない微笑みに、ライオネルもほっと息をつく。

「ええと――じゃあ……そろそろドレスを整えようか。実は僕、君があまりに息苦しそうだったから……その……」
「……?」

 ライオネルの視線が、ゆっくりとアメリアの肩へ向けられる。

 その視線を追ったアメリアは、やっと自分があられもない姿であることに気が付いた。

「――っ!」

 これにはさすがのアメリアも顔を赤くする。するとそれに釣られて、ライオネルの顔が真っ赤に染まった。

「ご、ごめん! 僕、後ろを向いてるから……! ああ、でも、コルセットも緩めちゃったから、君だけじゃ直せないかもしれない」
「…………」
「やっぱり、誰か女性を呼んできた方がいいよね……。かと言って君を置いていくわけにもいかないし……誰か通ってくれるといいんだけど」

 そう言って、通りの様子をうかがうライオネル。

 するとそんな彼の腕をぐいっと引き寄せて、アメリアが唇を動かす。

『あなたが締めるのよ』――と。
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