【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
安堵と心配の入り混じった表情でアメリアを見下ろすウィリアムも、そんな彼を安心させようと精一杯に微笑むアメリアも、ひとかけらの違和感もない、微笑ましい光景であるはずなのに……どうして……。
ライオネルは、自身の中に込み上げる得体の知れない感情に顔をしかめた。
胸の辺りがチクチクして、息をするのも苦しくなる。
――僕はいったいどうしたんだ……? アメリアの笑顔を見るのが辛いだなんて、どうかしている。
生まれて初めての感情に、彼はその場に立ち尽くす。――そのときだ。
「――ライオネル様」
唐突に名前を呼ばれ、彼はハッと我に返った。
声のした方を振り向くと、ルイスが自分を見つめていた。
「……ルイス」
「ご無沙汰しております、ライオネル様。マクリーンの名を聞いたときはまさかと思いましたが、やはり貴方様だったのですね」
「あ……ああ、――うん」
「一度ならず二度までもアメリア様をお助けいただき、何とお礼を申せばいいか――」
「いや……お礼なんて……。今回のは……仕事ですから……」
――そうだ。これは仕事だ。相手が知人だったからこんな変な気持ちになるのだ。きっと、ただそれだけだ。
ライオネルはそう思い込もうとする。
彼はウィリアムの前に進み出た。
そして目礼する。アメリアの肩を抱きしめるウィリアムに――まるで、そう――初対面の相手にするような態度で。
すると、ニコリと笑顔を返すウィリアム。
「礼を言おう。私が目を離したばかりに、彼女を危険な目に合わせるところだった。君が彼女を見つけてくれて本当に助かった」