【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
その言葉が本心なのか、ライオネルにはわからなかった。
けれどウィリアムがアメリアを見つめる視線には、以前と比べ物にならないほどの愛情を感じられる。
しかしそれでも、ウィリアムという男を信用できないことは変わらない事実だ。――それに。
――目を離したばっかりに……だって?
ライオネルはウィリアムの言葉に強い葛藤を感じていた。
アメリアは決して無事ではなかった、自分は間に合わなかったのだ。
だが、そもそもウィリアムがアメリアから目を離していなければ、彼女はあのような酷い目に合わずとも済んだはずだったのか――そう思うと、怒りに我を忘れてしまいそうになる。
それがただの八つ当たりだということは理解していても。悪いのはアメリアの首を絞めていたあの男なのだとわかっていても――。
「……っ」
できることなら口にしてしまいたい。どうしてほんの一瞬でも彼女から目を離したのかと。どうしてその手をしっかりと掴んでおかなかったのか、と。
何も知らずにお気楽に微笑むその顔を、ぶん殴って責め立ててやりたくなる。彼女は――アメリアの味わった痛みは、こんなものじゃなかったんだぞ、と――。
けれどライオネルは、自分の中に湧き上がるその葛藤を必死の思いで押さえつけた。
なぜなら、彼はアメリアと約束したからだ。アメリアがその身に受けた被害について、誰にも口外しないと。特にウィリアムには、気付かれないようにしなければならないのだと。
だからライオネルは、顔に笑みを張り付ける。
「そのようなお言葉、僕にはもったいないです」と――笑顔の裏に、沸々とした暗い想いをひた隠しにして。
「では、そろそろ参りましょうか。通りまでは僕が案内いたします」
ライオネルは、気を失ったニックを背負い三人の先頭を歩き出す。一刻も早くこの場を立ち去りたい一心だった。