【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
ああ、確かにそうだ。僕は知りたいんだ。彼女が、ウィリアムにだけは絶対に知られてはならないなんて言い方をするから……。
だが知りたいという欲求の向こう側で、知ってはならないと、誘いに頷いてはならないと感じている自分もいる。
知ったらきっと後悔すると――なんの確証もなく、本能が告げていた。
「……僕は……」
答えられずにいるライオネルに、まるで最後通告とでも言うように畳みかけるルイス。
「私はどちらでも構わないのですよ。知ろうとも知らずとも、きっとあなたは後悔する。ですがこれだけは言わせていただきます。――その髪飾りの存在を知った時点で、あなたの選択肢は二つに一つ。私と秘密を共有するか、あるいは、もう二度と私どもには関わらないか……それだけです」
「――っ」
「当然でしょう? どちらにせよその髪飾りはお返し願いますが。それはあなたが持つべきものではない」
「……っ」
ルイスの冷えた眼差しに、ライオネルの表情が凍り付く。――アメリアを助けた自分が、どうしてここまで言われなければならないのかと、そんな感情が揺れ動いた。
「どうかご理解ください。中途半端に関われば、あなただけではなくご家族にも危険が及ぶことになる。そういう類の秘密なのです」
「――は」
まるで、その命を懸けろと言われているかのような選択に、心が大きく乱される。――今の今まで苦に感じなかった背中のニックの重みが、急に増したような気がした。
「君は、さっきから何を言ってるんだ……? 僕には、少しも意味がわからない」
さっきまで動いていた景色がいつの間にか静止していた。――否。止まっているのは自分の足だ。
歩みを止めたライオネルより数歩先の位置で立ち止まり、ライオネルを見据えるルイスの漆黒の瞳。
「意味など、あなたには不要でしょう?」
――既に答えを知っていると言わんばかりの、悲しげな笑み。
「私の目は誤魔化せません。――あなたはあの方に恋をしている。それが全てです」
「――な、ん……」
恋だって? 僕が……彼女に……?