【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉
二人はしばし見つめ合う。
その沈黙を破ったのはウィリアムの方だった。
「――ルイス、教えてくれ。お前とアーサーの間にいったい何があった? 俺の知らないところで、いったい何が起こっている? それは俺やアメリアに関係のあることなのか? それとも、お前たち二人だけの問題なのか?」
ウィリアムは語気を強める。
「俺はお前の言うとおりに生きてきた。幼かったあの日、俺に手を差し伸べてくれたのは……俺を救ってくれたのは、お前だったからだ。お前のことを信じていたからだ。だからお前がどんな嘘をつこうが、どんな秘密を隠そうが、取るに足らないことだと思っていた。お前の嘘も秘密も、全ては俺のためだと……。――だが……」
ウィリアムはルイスを見据える。こうなってしまっては、全てを知る他ない――と。
「今回ばかりは無理だ。――話せ、ルイス。お前は何を隠している? お前が俺をそそのかしたとは、いったいどういう意味だ。なぜお前がアーサーの名誉を貶める? それは俺に言えないようなことなのか?」
――太陽が落ちかける夕暮れ時の部屋で、二人はじっと見つめ合う。
呼吸一つ聞こえない静けさの中、窓から差し込む夕日が二人の影を床に長く伸ばしていった。
――しばらく沈黙が続く。
その間、ルイスはただじっとウィリアムの視線を受け止めていた。
瞬《まばた》き一つせず、漆黒の瞳をまっすぐウィリアムに向けていた。
「……僕は」
ルイスは何か言いかけて、けれどすぐに口を噤む。
自身の足先を数秒見つめ、決心したように息を吐き――そして再び唇を開いた。
「僕は、あなたを裏切った」
それは淡々とした声だった。それまでの躊躇いは何だったのかと思えるほど、普段のルイスらしい淀みない声だった。
「あなたを裏切ったんですよ、ウィリアム様」
「――っ」
落ち着いた声で繰り返すルイスとは対照的に、ウィリアムは喉を詰まらせる。裏切り――その言葉に、ウィリアムの瞳が恐怖に揺らめいた。