【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 ウィリアムは大きく息を吐き、視線を床に落とす。隣に座るルイスに向かって、「どうしてだ」と力なく問いかける。

 するとルイスは一拍置いて、再び口を開いた。

「ウィリアム様。幼い頃、僕らが交わした契約を覚えていらっしゃいますよね。僕は僕の願いのために、あなたの側にいることを選んだ。あなたはあなた自身のために、僕を側に置くことを望んだ。つまり、アーサー様を僕から……いえ、あなたから遠ざけたのは、僕らの願いを叶えるために必要だったからなのです」
「……どういう、意味だ」
「僕の願いは以前お伝えしたとおり、あなたの手でアメリア様を幸せにすること。……そして、あなたの願いは……」

 言いかけたルイスの言葉に、ウィリアムは大きく瞼を開く。まさか――と、その表情が動揺と困惑に歪んだ。

 ウィリアムは眉をひそめ、右手でルイスの言葉を遮る。

「待て。ちょっと待ってくれ。……つまりお前は、アーサーやアメリアが、俺たちと同じ存在だと言っているのか?」

 アメリアについては薄々感づいていた。ルイスがアメリアを特別視する理由は何なのかと考えたとき、それしか理由が思い当たらなかったからだ。
 けれどまさかアーサーまでもが……いや、やはりそうだったのかと……言うべきなのか。

 狼狽えるウィリアムを横目に、ルイスは重たい腰を上げ、窓際の丸テーブルへ歩み寄る。

 ウィリアムに背を向けたまま空のグラスにワインを注いで、ぐい――と一気に飲み干した。まるでそうせざるを得ないとでも言うように、ルイスは空になったグラスに再びワインを注ぎ……けれどそこで、手を止める。

「……ウィリアム様」

 囁くほどのその声は、窓から差し込む夕日に溶けて消えてしまいそうな憂いを感じさせた。それは二ヵ月前のあの日――残された時間はあとわずかだと、そう言ったときと同じように。
< 97 / 121 >

この作品をシェア

pagetop