【コミカライズ】愛しのあの方と死に別れて千年 ~今日も私は悪役令嬢を演じます~〈2〉

 ルイスはグラスを見つめたまま、静かな声で告げる。

「あなたの仰るとおり、あのお二人は僕らと同じく、その身に不思議な力を秘めている。その中でも彼女は特に僕と近い存在です。つまりあの方こそが、あなたの運命の相手。アメリア様なら……アメリア様だからこそ、あなたの全てを受け入れることができる。――ですから」

 ルイスがゆっくりと振り返る。

 夕暮れの色に染まる黒い瞳が、ウィリアムの視線を捕らえた。

「預かっていた〝あなたの心〟を、お返しさせていただいても……よろしいでしょうか」 
「――ッ」

 そう言ったルイスの表情は怖いほどに穏やかで――ウィリアムはもうそれ以上何も言えずに、ただ黙って俯くことしかできない。

 そんなウィリアムに、ルイスはただ微笑みかける。

「大丈夫。怖がらなくていいんです。僕は最後まで見届けるつもりでいます。だから、アメリア様を愛してしまわれていいんですよ。……そうでなくても、僕にはあなたの力をこれ以上抑え続けるのは難しい。悔しいですが、僕はもうあなたの騎士(ナイト)ではいられない」
「何を……。俺はお前をそんな風に思ったことは一度だって……」
「ええ、承知しております。ですがこれはもう決まったこと。さすがの僕も時の流れに逆らうことはできませんから」
「…………」
「さぁ、これで話はお終いです。ですが――いいですか。あなたの持つ力のことは、決してアメリア様に話してはなりません。それにあなたも、あの方の持つ力について一切詮索してはいけません」
「それは、どうしてだ」
「隠したがっておられるからです。自身の持つ力を誰にも知られたくないと、そう考えておられるからです」
「…………」
「ですからあなたには今までどおり……いえ、今まで以上にアメリア様と向き合っていただきたく。それだけが、僕の唯一の願いです」
< 98 / 121 >

この作品をシェア

pagetop