【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
 少し戸惑いながらもそれを受け取り、中身を確認する。

「……あの、お父さま。いったい……?」
「父さんの友人の子なんだ。辺境伯を継いでいるが、未婚でな。エリカが良ければ、会ってみてくれないか?」
「……お父さまの、ご友人?」

 そういえば、お父さまって結構顔は広いけれど、広く浅くの付き合いが多いような気が……。友人、ときっぱり言い切ったということは、信頼している人なのだろう。

「年に一度、コンスタントに浮気をするような相手ではエリカを幸せにはできないだろう。エリカのゆっくり相手を探したいという気持ちもわかるが……父さんの顔を立てると思って、一度だけでも良いから会ってみてくれないか?」

 私の反応を(うかが)うように、お父さまがちらりとこちらを見る。釣書に視線を落としてから、微笑みを浮かべてみせた。

「お父さまの頼みなら、断れませんね」

 お父さまはぱぁっと表情を明るくさせて、「良かった。それじゃあ早速返事をしてくるよ」と椅子から立ち上がり、慌ただしくこの場から去る。

 そんなお父さまを、お母さまは口元に手を当てて見送っていた。

 愛おしそうに、目元を細めながら。

「そうそう、これ、今日の号外なのよぉ」

 と、新聞を渡された。釣書を置いて、新聞に目を通すと――昨日のことが載っていた。

 オイゲン陛下からの言葉まで。

 婚約破棄を宣言されたのは昨日なのに、よくまぁ号外が作れたものね。感心しちゃう。

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