【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
「うふふ、エリカったら、顔を真っ赤にさせちゃって」

 お母さまが小声でつぶやく。だって、だって!

 釣書だけではこんなに格好いい人が来るとは思わないじゃない――……!

「ようこそ、レームクール家へ。レオンハルト、会うのは久しぶりだね」
「はい、レームクール伯爵。ご無沙汰しております」

 私の手を離して、すくっと立ち上がってから、お父さまに身体を向けた。

 そして、軽く頭を下げる。

 フォルクヴァルツ辺境伯の横顔もとても素敵で……婚約を白紙にされてから二週間くらいしか経ってないのに、私の心はすっかり彼に傾き始めてしまったようだわ……

 だって、こんなにも、ドキドキと胸が高鳴っているのだもの。

 きっとこれから、『恋』に変わるのだろう。

 お父さまとフォルクヴァルツ辺境伯が会話をしていると、お母さまが近付いてきた。

「格好いい人よねぇ?」

 扇子で口元を隠して、こそっとささやくお母さま。

 こくりとうなずくと、お母さまはぱぁっと表情を明るくさせてお父さまに近付き、クンっと袖を引っ張った。

 お母さまに顔を寄せるお父さま。お母さまはなにかをささやいているみたい。

 すると、すぐにお父さまがこちらを見てから小さくうなずき、フォルクヴァルツ辺境伯の肩にぽんっと手を置く。

「それじゃあ、早速だけど二人で話してみてくれるかい? 行こうか、マイハニー」
「ええ、ダーリン。ごゆっくり楽しんでねぇ」

 するりとお父さまの腕に自分の腕を絡ませると、お母さまはパチンとウインクして……両親とセバスチャンは応接間から出ていってしまった。

 残された私たちは互いに顔を見合わせる。

 待って、急に二人きりだなんて、どうすればいいのっ?
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