【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
 私は私の意地のためにいろいろなことをクリアしてきた。

 ダニエル殿下の婚約者として……いいえ、王族の婚約者として、相応しくないと思われたくなかった。それは私のプライドが許さない。

「愛は芽生えていない、と?」
「芽生えそうなところを、ぐしゃっと踏みにじられた、が正解ですわ」

 扇子を広げて口元を隠し、目元だけで笑う。

 婚約者になったのは十歳の頃。

 ダニエル殿下が私を選んだと聞いたときは、とても嬉しかった。

 でも、その嬉しさが続いたのは数ヶ月だけ。

 王族の婚約として、私は一気に忙しくなった。

 家庭教師が増え、毎日張り詰めたように生きていたのよね。

 ダニエル殿下と会うときも緊張した。

 殿下はそんな私を見てどう思ったのか、次に会うときは女性と仲睦(なかむつ)まじい姿を見せつけてきたのよ。

 彼よりも年上の女性だった。彼女に甘える姿を見せつけてきたのだ。

 その光景はあまりにも毒だった。だって私、ダニエル殿下に好かれようと思っていたのだから。

 あのときの感情がよみがえる。いろいろ複雑な気持ちだったのよね。

 私がもっとがんばれば、ダニエル殿下は私のことを愛してくれるんじゃないかって、努力を怠らなかったことだけは、自分を褒めたいわ。

「それでも、婚約を続けていたのですね」
「さすがに王族との婚約を、こちらこそ解消するのは……」

 だからこそ、卒業パーティーで婚約破棄を宣言されたときには驚いたけれど、これでダニエル殿下の婚約者ではなくなることに安堵もした。

 こんなに素敵な人と、お見合いできたしね!
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