【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
「ヘアオイル?」
「髪につけてスタイリングをすると、まとまりやすいんですよ。髪のダメージも防いでくれますし」
「ああ、だからそんなに綺麗な髪なんですね」

 納得したようにつぶやいて、私の髪にそっと触れようとしたところで、動きを止めた。

 まとめてあるから、触れるのに躊躇したのかしら?

「触れても構いませんよ」
「ですが、こんなに綺麗にまとめっているのに、崩してしまうのでは、と」

 帽子を被っているから、そんなに気にしなくてもいいと思うのだけど……

 私はそっと帽子を取ってみた。レオンハルトさまがほんの少し、目を瞠った気がする。

「どうぞ、触れてみてください」
「……、では、お言葉に甘えて」

 レオンハルトさまは私の前髪に触れて、その感触を楽しむように指で梳いた。

「さらさらですね」
「でしょう?」

 ふふ、と目を細めて微笑むと、レオンハルトさまは照れたように頬を赤く染め、前髪から手を離す。

 それにしても近い、近いわ……!

 距離が近くて鼓動が大きく聞こえる。

 この鼓動の音、レオンハルトさまの耳に届いていないよね!?

「もう少し、歩きましょうか」
「はい」

 手を繋いだまま歩き出す。どうやら中央の休憩スペースに向かっているようだ。

 ダンスレッスンや淑女としての歩き方のレッスンのおかげで、それなりに体力はあるのよね。

 足は速くないけれど、持久力ならそこそこあると思う。

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