【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
「あ、あの、ありがとうございます……」

 小さな声でお礼を伝えると、彼はぽんぽんと私の頭を優しく撫でる。

 全然いやな気はしなかった。

 むしろもっと撫でてほしいと思うくらい、心地よくて……でも、鼓動が早鐘を打っていて落ち着かない、不思議な感覚。

 ……うう、我ながら、なんて乙女な思考なの……!

 段々と落ち着いてきて、もう大丈夫です、と彼から離れようとした。けれど、ぎゅっと抱きしめられて頭を撫で続けられる。

 な、なに、なんなのこの状況……!

「れ、レオンハルトさま……?」
「目が赤くなってしまいましたね。少し、休んでから戻りましょうか?」
「い、いえ、私は大丈夫です」

 ふるふると首を横に振る。顔を覗き込まれているから、かお、顔が近い!

 もう少し近付けば、唇と唇が重なってしまうくらいの近さ。

 ドアップで見てもなんて整っているお顔なのか!

 好みのタイプというのもあるけれど、この人自身が格好いいのよね……

 思わず目を奪われてしまう端正な顔に、頬が赤くなってしまう。

 ……そんな人と付き合うのか、私。しかも、結婚を前提として。

 結婚したら、私がレオンハルトさまについていくのよね。

 彼が治める領地、フォルクヴァルツ領はどんな場所なのかしら……?

「あの、どうしてこの場所をご存知だったのですか?」

 王都に住んでいる私でも、このチューリップの花畑を知らなかった。

 なぜ、レオンハルトさまが知っていたのかしら……と気になって(たず)ねると、彼は顔を赤くして眉を下げる。

「……その、ちょっと、王都の……穴場を……調べていました」

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