【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
 その返事が意外だったのか、お父さまもお母さまの声が「え?」と重なる。

「貴族の婚約は政略が主でしょう? レームクール伯爵令嬢がダニエル殿下と婚約したのも、それが理由でしょう? わたしたちはまだ出逢って二日です。……その、わたしは政略ではなく、わたし自身を知って、選んでもらいたいと考えているので……エリカの気持ちを、優先させたいのです」

 ――ダニエル殿下との婚約は、愛情が芽生えそうなところで踏みつぶされた。

 ――でも、彼は……そんな私のことを、気遣ってくれるのね。

「……なるほど。婚約が白紙になってまだ二週間くらいだしな。エリカの気持ちもまだ落ち着いていないということか……」

 お父さまが、ぶつぶつとなにかをつぶやいている。

 お母さまは私とレオンハルトさまを交互に見て、パチンとウインクしてきた。……な、なぜウインクするのですか、お母さま。

「幸い、フォルクヴァルツは父に任せていますので……一ヶ月ほど、親睦を深めたいと思っているのですが……迷惑でしょうか?」

 こてんと首をかしげるレオンハルトさまに、お父さまはきょとりとした表情を浮かべ、それからにんまりと笑みを深めた。

「うん、それがいい。互いのことを知っていくのは大切なことだからね。……さて、レオンハルトくん、今日はまだ時間があるかな?」

 お父さまの許可も得て、レオンハルトさまは安堵したように息を吐く。

「はい、あります」
「では、ここからは男同士で話そうじゃないか!」

 明るくレオンハルトさまを誘うお父さまに、お母さまはそっと離れて私の手を取った。
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