【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
「エリカは、自分の感情を誤魔化すことに長けちゃったのねぇ」
困ったように眉を下げるお母さまに、私はなにも言えなかった。
だって、覚えがあるのだもの。
感情を表に出すことがないように、どんなことがあっても私は揺るがないように、不都合なことを受け入れるのではなく、誤魔化すことを覚えてしまった。
ダニエル殿下の年に一回の浮気だって、私が本気でやめてほしいと訴えれば、やめてくれたのかもしれない。
――でも、そんなことをするよりも、勉強に時間を費やしたかった。
それが、『可愛くない女』だと思われたのかしら……?
アデーレと付き合い始めてから、私に対するダニエル殿下の評価は『可愛くない女』やら『つまらない女』だと耳にすることが増えていたのよね。
きっと、アデーレにダニエル殿下が惹かれたのは、『可愛い女』で『面白い女』だったからだろう。
「恋は良いわよぉ。女の子をきれいにしてくれるし、世界が輝いて見えるもの。――でもねぇ、恋ってきれいなだけではいられないのよぉ」
お母さまは優しく微笑みを浮かべて、恋のことを語り出すお母さま。
「きれいなだけはいられない……?」
「人を好きになるって、自分の醜い心と向き合うことでもあるのよぉ」
「醜い心?」
「ええ。あの女性とどうして親しげなのかしら? どうしてそんなに優しくするのかしら? どうして笑顔を見せるのかしら? って。……まぁ、嫉妬よねぇ」
「嫉妬」
「それだけじゃないわぁ。独占欲もあるでしょうし、彼がどんなことを考えているのか気になっちゃう。……でもね、それも人を好きにならないと感じないことだと思うのよぉ」
しみじみと語るお母さまに、お父さまに対してそんなことを感じていたのかな? と首を捻った。