【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
「それは、お母さまがお父さまに恋をしてから、知った感情なのですか?」
「あら、気付いちゃったぁ? うふふ、そうよぉ」

 お母さまは恥ずかしそうに頬を赤く染めて、扇子で隠す。

「お母さまとお父さまの馴れ初めを、教えていただけますか?」

 お母さまはきょとんとした表情になったけれど、すぐににんまりと目を細めてうなずいた。

「社交界デビューしたときに、あの人がいたのよねぇ。パッと見て、お父さまに一目惚れしてねぇ、そのまま勢いでプロポーズしちゃったのよぉ」

 うふふ、と当時を懐かしむお母さまに、私は目を大きく見開く。

 お母さまが、お父さまにプロポーズしたの!? 会っていきなり!? お父さま、かなりびっくりしたんじゃないかな?

「お父さまは、すぐにお母さまのプロポーズを受けたのですか?」
「いいえ、まさかぁ。会って数分もしないプロポーズだったから、なにかの冗談だと思ったみたい。でもね、真剣なことに気付いてくれて、まずはお友だちからってことになったのよぉ」

 扇子で顔を隠したまま空を見上げるお母さま。

 ……お父さま、お母さまの気持ちを大切に受け取ったのね。

「お父さまが国に帰るときに、『あなたはこの国に未練はないのですか?』と聞かれたわねぇ。だから、『あなたがいない国で暮らすほうがいやですわぁ』って答えたの。そしたら彼、国に帰って一ヶ月くらいでお母さまのところに来てくれてね、プロポーズをしてくれたのよぉ」

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