【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
 メイドたちはこの決戦の日に相応しい、赤いドレスを選んだ。

 ドレスに着替え、メイクもバッチリとしてもらい、自分の心を落ち着かせるために深呼吸を繰り返す。

「お綺麗です、お嬢さま!」
「ありがとう、行ってくるわ」

 手首には、あのチューリップの花畑でもらったブレスレット。

 これを身につけて、視界に入れるとなんだか……どんなことにも耐えられるような気がする。

 気合いを入れるように、もう一度深呼吸をした。

 自室から出ていくと、私のことを待っていたのか、レオンハルトさまが扉の近くに立っていたみたいで目を見開く。

 私の姿を確認すると、ふわりと表情を緩めて――……

「今日も、とても綺麗ですね」

 そう、声をかけてくれた。

 ――この人はっ、これだから……っ!

「あ、ありがとうございます……!」
「……? 頬が赤いようですが、熱でも……?」
「大丈夫です!」

 あなたがさらっと私を照れさせることを言うからです! とは口が裂けても言えない。

 レオンハルトさまはすっと手を差し出した。

 彼を見上げて、それからその手を取る。

 きゅっと握られる手の温かさを感じて、なぜかはわからないけれど……その体温に、緊張が解けていくようだった。

「――行きましょうか」
「……はい」

 玄関まで歩き、王城に向かうための馬車に乗り込む。

 お父さまとお母さまは別の馬車で向かうようで、私とレオンハルトさまのふたりきり。

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