【完結】婚約破棄×お見合い=一目惚れ!?
「黙れ、ダニエル!」

 オイゲン陛下の鋭い言葉が飛んできて、ダニエル殿下は「チッ」と舌打ちして黙り込む。

 ちらりとレオンハルトさまの様子を見ると、少し驚いたように目を(またた)かせ、こちらを見た。

「え、あの人が八年ものあいだ、エリカの婚約者だった人?」

 小声で(たず)ねられて、こくりと首を動かす。

 レオンハルトさまはマジマジとダニエル殿下を見て、「……えぇぇえ」と困惑したように眉根を寄せた。……ああ、その表情も格好いいわぁ。

 なんて、思わずうっとりしてしまった。

「わかった、釣書はもう送らぬ」
「ありがとうございます」
「父上! この女は――」
「ダニエル。エリカに関して、あなたはなにも口を出せる立場ではなくてよ」

 デイジーさまにぎろりと睨まれて、ダニエル殿下は悔しそうに唇を噛む。

 ……婚約を白紙にしたのに、どうしてダニエル殿下が口を出せると思ったのだろう?

 なにを考えているのかわからなくて、怖いわ。

「レオンハルト・フォルクヴァルツ。そなたのことはこの王都にも耳が届いている。よくぞ国境を守り切ってくれた」
「陛下の臣下として、当然のことをしたまでです。それに、わたしだけが国境を守っているわけではありませんので……」
「謙虚なことよ。エリカ・レームクール。そなたの才を手放すのは惜しいが、フォルクヴァルツ辺境伯にはそなたが必要になるだろう。婚約や結婚をするのなら、王家はそなたたちを祝おう」
「ありがたきお言葉ですわ、陛下」

 ――まさか、陛下からこんなに温かいお言葉をもらえるとは……

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