first date
「清楚系女子って感じね。ヘアアレンジいくわね。ハーフアップで三つ編みしていい?」

「お任せします」

 ヘアアイロンで緩くウェーブをかけ、両サイドから三つ編みをつくって後ろでまとめてくれた。

「ほら、かわいい」

「すごいですね。こんな私初めてです」

「うんとかわいくするって言ったでしょ」

「ありがとうございました」

「俊矢、あなたの絢ちゃん返すわよ」

 松下さんはソファで雑誌を読んでいた俊矢さんに声を掛けた。彼は雑誌から顔を上げ、私の顔を見た瞬間立ち上がった。

「あなた好みでしょ」

「おまえ…」

「俊矢は清楚系が好きなのよ」

 彼女はこっそり私に耳打ちした。

「え?」

「じゃあ、デート楽しんでね」

 彼女はポンと私の背中を押した。

 手を振る松下さんを背に、美容室を出た。俊矢さんはまたさりげなく私の手を繋いできたのでドキリとした。私は手を繋ぐことさえ一生慣れそうにないのに、なぜこの人は滑り込むように手を繋いでくるんだろう。そしてそれがさも当たり前かのような顔で。

恋愛から遠のいているなんて嘘ではないか?
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