first date
「ねえ、お腹空かない?」

「そう言われれば…」

 腕時計を見ると、とうにお昼時を過ぎていた。

「お昼、このへんで食べよっか。何か食べたいものある?」

「うーん…。何があるんでしょう?」

「じゃあ3択ね。1パスタ、2カレー、3ハンバーガー!」

 彼は3のハンバーガーだけやたらに強調して言った。きっとハンバーガーが食べたいのだろう。分かりやすい人だ。

「じゃあ3のハンバーガーで」

「俺もハンバーガーが食べたいと思ってたんだよ」

 ほら、やっぱり。

「いつか行ってみたいと思っていたお店があってね。すぐそこだよ」

 彼はこのあたりのお店に詳しいようだ。よく来るのだろうか。誰と来るのだろう?

 訪れたのはアメリカのダイナーのようなおしゃれなハンバーガーショップだった。黒毛和牛100%が売りのお店らしい。その分、値は張るようだが、某有名バーガーチェーン店とは比べ物にならないくらいボリュームがある。バーガーを注文したらフライドポテトとピクルスがついてくるらしい。

私はアボカドバーガーのレギュラーサイズとオレンジジュースのセット、彼はベーコンチーズバーガーのラージサイズとコーラのセットを注文した。細身なのによく食べるなあと思う。

 テラス席が空いていたので、気持ちよい風に当たりながらそこで食べることにした。お昼時より少し時間が遅いせいか、注文してからすぐにきた。

「いただきまーす」

 彼は早速大きなバーガーに大きな口を開けてかぶりつく。真正面から彼の食べる姿を見られるなんて…といささか感動しながら彼の食べる様を見つめた。相変わらずいい食べっぷりである。

一口が大きすぎて、例のごとく頬をリスのように膨らませて、目を細めながらもぐもぐと咀嚼している。「おいしい」の一言もまだ言っていないのに、それがおいしいものだと伝わってくる。あまりにおいしそうに食べるので、こちらも無意識に口角が上がってしまう。
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