first date
 長いこと接客業をしていれば、常連客の顔やその人が現れる時間帯も自然と覚えてしまうものだ。変わった客もいるもので、何人か気になる常連客がいるのだが、私がどうしても一番気になるのは、今しがた注文したこの客だ。

何といってもその風貌が目立つのだ。

顔立ちの良さも去ることながら、服装はいつも派手なので目を引く。今日はいかにもロックというようなエナメルの黒い革ジャンを着ていた。彼はいつも決まって大通りに面したカウンター席の一番端に座り、パソコンで作業をしている。

そして週に結構な頻度でこの店に通っており、このくらいの時間帯にはよく店にいるのだ。

午前中のうちからかなり長時間ここに滞在することも稀ではない。たまにボックス席に座って誰かと話をしているときもある。相手となる人は男だったり、女だったりするが、彼が派手な服装に対して相手は決まってスーツなので、そのチグハグ感は不思議な絵面だ。


大抵何かの打ち合わせをしていたり、文書を読みながら、ああでもないこうでもないと話していたりするところをよく見る。

彼は、相手の人たちから「先生」と呼ばれており、話の内容から推測するとおそらく小説家なのだと思う。

 この常連客を見ているのが一番おもしろい。こうして私の常連客観察は、つまらないウェイトレス業務にささやかなスパイスを与えてくれた。
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