first date
ある日の夕方、例の彼は思い詰めた表情で来店してきた。いつものカウンター席に着くや否や、この世の終わりみたいな呻き声を上げて頭を抱え、長い髪をぐしゃぐしゃとかきむしった。
「どうかされたんですか?」
私はお冷とおしぼりを置きながら思わず聞いた。
「いやぁ、ちょっと仕事が行き詰まっててねぇ…。ありがとう」
彼は乱れた髪をそのままに、伏し目がちに言った。
「ご苦労なさってるんですね」
「ええ、まあ。あ、ホットコーヒーお願いします」
「かしこまりました」
彼は腕組みをしてノートパソコンと小1時間にらめっこをしていたが、一向に作業する様子はなく、ただ石のようにそこに鎮座していた。たまに思い出したかのように機械のアームのような腕を動かし、コーヒーカップを取って口に運んだ。
「コーヒーのおかわりはいかがですか?」
「ああ、ありがとう」
私はコーヒーポットから空になったカップにコーヒーを注いだ。
「あ!」
コーヒーを注いでいる途中で彼が大きな声を出したので、驚いて危うくコーヒーを自分の手にひっかけるところだった。
「どうされ…―――」
「たんですか?」と言いかけたのを彼は遮り、徐に立ち上がって突拍子もないことを言い出した。
「僕と1日だけデートしてくれませんか?」
「はい?」
突然の彼の懇願に理解が追い付かない。彼の気迫と必死な表情に気圧されて後退りする。彼は目を輝かせてじりじりと迫って来る。
「どうかされたんですか?」
私はお冷とおしぼりを置きながら思わず聞いた。
「いやぁ、ちょっと仕事が行き詰まっててねぇ…。ありがとう」
彼は乱れた髪をそのままに、伏し目がちに言った。
「ご苦労なさってるんですね」
「ええ、まあ。あ、ホットコーヒーお願いします」
「かしこまりました」
彼は腕組みをしてノートパソコンと小1時間にらめっこをしていたが、一向に作業する様子はなく、ただ石のようにそこに鎮座していた。たまに思い出したかのように機械のアームのような腕を動かし、コーヒーカップを取って口に運んだ。
「コーヒーのおかわりはいかがですか?」
「ああ、ありがとう」
私はコーヒーポットから空になったカップにコーヒーを注いだ。
「あ!」
コーヒーを注いでいる途中で彼が大きな声を出したので、驚いて危うくコーヒーを自分の手にひっかけるところだった。
「どうされ…―――」
「たんですか?」と言いかけたのを彼は遮り、徐に立ち上がって突拍子もないことを言い出した。
「僕と1日だけデートしてくれませんか?」
「はい?」
突然の彼の懇願に理解が追い付かない。彼の気迫と必死な表情に気圧されて後退りする。彼は目を輝かせてじりじりと迫って来る。