一家離散に追い込んでおいて、なぜ好きだなんて言うの
「帰って、上屋敷くん。私はあなたの顔を二度と見たくない」

 そう言い捨てた葉月は(きびす)を返し館内へ戻ろうとした。そんな葉月の腕を、秀が再び捕らえて自分の方へと引き寄せる。

「待ってください。俺は源さんを怒らせに来たわけじゃありません」

 うんざりした。葉月は何も答えず手をほどこうとしたが、秀が力強く引っ張るので離せそうにない。

「離して」
「話を聞いてくれたら離します」

 秀の言葉に、葉月は渋々黙って彼の言葉の続きを待つ。秀はひと息ついて言った。

「源さん、俺と一緒に東京へ来てください。俺と共に生きてください」
「……はい?」

 何を言っているのだろう。最低最悪の人生の仇が、一緒に来いだそうだ。笑わせてくれる。一秒たりとも同じ空気を吸いたくなんかないのに。
 鼻で笑った葉月に対し、秀は続けた。

「俺の秘書として東京のオフィスで働いてもらいたいのです。給料は今の2倍出します。いや、3倍でも良い」
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