一家離散に追い込んでおいて、なぜ好きだなんて言うの
 葉月は家政婦と共にリビングへ向かう事にした。家政婦は葉月を見て目を細めている。

「さすがはお嬢様でございます。今年も主役の座を射止められて、奥様もご主人様もお喜びになると思います」
「そうね。おかげで私、幼稚園から高校3年生までずっと主役なのよ! 白薔薇学院はじまって以来の快挙なんですって」

 頑張ってきた甲斐がある。勉強もスポーツも交友関係も、すべて完璧にこなしてきたからこそ射止めた主役だった。
 意気揚々と葉月はリビングのドアを開ける。

「お母様、聞いてください! 私、今年も文化祭で」

 勢いよく話し始めた葉月だったが、部屋の雰囲気を察してすぐに口をつぐんだ。
 広いリビングの中央では、大きなソファーに腰かけた母が髪を振り乱し頭を抱えている。

「お、お母様? どうしたのですか」

 葉月は恐る恐る母に近づいて、ソファーの前方が見えたところで足を止めた。
< 2 / 61 >

この作品をシェア

pagetop