一家離散に追い込んでおいて、なぜ好きだなんて言うの
「ちょ、上屋敷くん」

 葉月が声を掛けるのと同時に、秀は目を閉じてそのまま葉月の肩に倒れこんできた。葉月の肩に頭を乗せ、寝息を立てている。

(寝落ち……!)

 よほど疲れていたのだろう。最近の予定を思えば無理もない。
 せっかく眠れた彼を起こすのも可哀想になって、葉月はしばらくそのままにすることにした。
 規則正しく上下に揺れる秀の頭に、自分の頭をコツンとぶつける。

(上屋敷秀。真面目で一生懸命な人ではあるのよね)

 葉月にとって彼は一家離散となった元凶だけど、だからといって彼が悪人かどうかと考えると、そうでもないよなと近頃の葉月は思っている。少なくとも、こうして彼と一緒に寝る事が嫌だと思わないくらいには、葉月も秀を人として認めていた。
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