一家離散に追い込んでおいて、なぜ好きだなんて言うの
 ぎゅっと抱き寄せられ、葉月は秀の胸元にすっぽりおさまってしまった。

「すみません、源さん。今度は絶対に俺が守り抜きますから。あなたを傷付けることは絶対にしませんから。だから俺のそばに居てください」

 秀のハグは強引なくせに優しく、どこか弱々しかった。まるで壊れやすいガラス細工に触れるように、葉月を柔らかく抱きしめる。
 心地よい。
 葉月はそう思った。

「上屋敷くんのこと、信じていい?」
「当然です。俺はいつだって源さんの事を想っています。俺にあなたの事を守らせてください」
「……ありがとう、上屋敷くん」

 上屋敷秀を恨む葉月はもういない。ただただ彼を社会人として尊敬し、人として好意を持っているだけだった。
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