一家離散に追い込んでおいて、なぜ好きだなんて言うの
「って、ちょっと待ってよ! 私は今日、何をしたら良いのよ!」

 叫んだところで返事があるわけはない。
 葉月は慌てて秀のスケジュールを確認した。が、数日前まで入っていたはずの今日の予定が、すべて白紙になっている。

「なんで?」

 秀は一体どこで何をするのだろう。秀のスケジュール管理を任されていたはずなのに、葉月は何も知らない。

「……いや、まあ、いいか」

 葉月はとりあえず、秀の淹れた珈琲をひとくちすすった。
 やることがないという事は、休みという事だ。……たぶん。
 折角手に入れた自由時間なのだから、有意義に使おう。葉月は折角だからと父に連絡し、ランチの約束を取り付けた。



 父の勤務工場は、都心のど真ん中にある上屋敷ホールディングスと違い、郊外にある。
 葉月は父の勤務地近くへ出向き、父と二人でランチを取った。父の話では、遠く四国で働いていた母も上屋敷グループへの転職が決まったと言う。もうじき父の元へ引っ越してくるそうだ。これもすべて秀の差し金である。

「上屋敷専務は良くしてくれているよ、本当に」

 父のその言葉に、葉月も嬉しくなる。
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