一家離散に追い込んでおいて、なぜ好きだなんて言うの
「あの不正って? お父様が……不正?」

 葉月にとってそれは初耳だった。そんな事はあり得ない。あの父が不正なんて、するはずが無い。
 けれどニヤニヤ笑った竹内は、ありえない話を続けている。

「そうだよ、葉月嬢。ミナモトは粗悪な材料を使って製品を作っていたんだ。利益のため、全世界を騙してきた!」
「……嘘」

 血の気が引いていく。ふらついた葉月に気付いた秀が、葉月を支えた。

「でも、だって、不正なんて」
「葉月嬢が知らなくても無理はないさ。ボクが不正をリークする前に、そこの上屋敷が買収という手を使ってすべて無かった事にしちゃったんだから」
「へ……?」

 見上げた秀は相変わらず黙っている。

「本当……なの?」

 思い返してみれば、父と秀は買収について「例の件」がどうとか言っていた。もしかしたら、それが不正の事なのかもしれない。

「噓でしょ?」

 嘘と言って欲しいのに、秀は答えなかった。葉月の中で全てが崩れていくような感覚になる。

「ねえ、上屋敷くん」

 返事が欲しい。本当に父が不正をしていたのか、秀がすべてもみ消したのか。
 葉月の問いに、秀はうんざりしたようなため息をついた。
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