一家離散に追い込んでおいて、なぜ好きだなんて言うの
「礼を言われると胸が痛みます。俺だって100%葉月さんのためだったわけではなく、自分の欲にまみれていたので」
「欲?」

 髪の上を滑り降りた秀の手は、そのまま葉月の手を握った。両手で葉月の手を包み込む。

「言ったでしょう、俺。葉月さんが好きだと。盗られたくなかったんです、誰にも」

 いつくしむような目をする秀。葉月はそのまま自分の体が溶けてしまうような錯覚を覚えた。

「俺は葉月さんと一緒に成長していきたいと思っています。一生。可能なら、公私ともに」

 ふわりと暖かな風が葉月の頬をかすめた気がした。
 秀が真剣なまなざしで葉月を見つめている。葉月はしどろもどろになりながら尋ねた。

「え……と、それは、その、秘書として?」

 秘書である葉月はすでに秀の家で暮らし、秀を公私ともに支えている。秀は苦笑いをして首を横に振った。
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