一家離散に追い込んでおいて、なぜ好きだなんて言うの
 大丈夫だと言ったのに、母はまだ葉月を心配そうに見つめている。

「無理はしちゃ駄目よ、葉月。大事な時なんだからね」
「大丈夫よ、お母様。秀くんが気遣ってくれてるもの。ね、秀くん」

 葉月はキッチンに立つ秀に声をかけた。秀は自信満々な顔を母に向ける。

「その通りです、お義母さん。ご安心ください。家事はハウスキーパーに任せていますし、今は体のこと、赤ちゃんのことに専念してもらっています」
「それなら良いけど、くれぐれも無理はさせないでね」
「当然です。大事な葉月さんと子どもを守ることは、俺の使命ですから」

 葉月は両親と顔を見合わせ、ふふっと笑い合った。胸を張る秀が頼もしい。秀は葉月の王子様だ。そう心の底から思う。
 珈琲を持ってきた秀が、葉月と両親の前にそれぞれの珈琲を置いた。

「幸せになりましょう。家族みんなで」

 さりげなくそんな事を言えてしまう、この優しさが秀なのだと葉月は思う。

「うん、そうだね」

 家族みんなが見つめ合い、微笑み合う。そんな日常が愛おしい。
 椅子に腰かけた秀は、葉月のお腹に手を伸ばした。

「君のことも愛してますよ」

 我が子に声をかける秀を、葉月は心から愛おしく思う。

「もちろん、葉月さんも」

 そう言いながら、秀は葉月の頬にくちづけをした。


 ― 了 ―
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