小羽根と自由な仲間達
無悪の屋敷に帰宅後。

僕は、今日返却された試験の解答用紙を手に、加那芽兄様の部屋を訪ねた。

試験で不正解だった問題を、加那芽兄様に教えてもらおうと思って。

分からないところを分からないままにはしない。勉強の基本である。

間違えたところを何度も復習して、完璧にマスターすることによって、次は絶対に間違えない。

学校の先生に教えてもらうのも良いけれど、僕は加那芽兄様に教えてもらうのが一番性に合っている。

加那芽兄様の教え方、凄く優しくて、そして分かりやすいですから。

だから、帰宅するなり、加那芽兄様に教えを請おうとしていたのだが…。

「加那芽兄様、失礼します…。…あれ?」

加那芽兄様の部屋を訪ねてみたが、部屋の中は空っぽだった。

てっきり部屋の中にいると思ってたのに…。…加那芽兄様はいずこに?

仕事に出掛けているのだろうか、と考えていると。

加那芽兄様の部屋の前で立ち尽くす僕の背後から、聞き覚えのある女性の声がした。






「…そこで何をしているのです」



その声に、僕はびくっと身体を震わせた。

恐る恐る振り返ると、そこにいたのは予想通りの人物だった。

「お…奥様…」

洒落たベージュのスーツを着て、険しい顔でこちらを睨む、中年の女性。

名前は、無悪玲衣子(さかなし れいこ)。

無悪グループの現代表であり、加那芽兄様の実の母親である。

…そして、僕の継母でもある人物だ。
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