小羽根と自由な仲間達
第7章 後編
そんな調子で、根を詰めて勉強すること二週間。

いよいよ、模試は来週に迫っていた。

試験勉強もラストスパートとなった今日この頃だが。

連日に渡って、ハードスケジュールで勉強し続けてきた僕の身体に、変化が現れてきていた。





放課後。部室にて。

「…はぁ…」

シャーペンを動かしながら、僕は深々と溜め息を漏らした。

…今日だけで、もう何度目の溜め息か分からない。

しかし、そんな僕を横目に。

「よーし…じゃあここで、スケッチブックに棒人間を描きまくる唱君を…パシャッ」

…調理実習室に、スマホのカメラのシャッターを押す音が鳴り響く。

「被写体の許可を得てから撮影してもらえますかね。俺は有料ですよ」

「良いじゃんちょっとくらい。はい次。萌音ちゃーん、こっち向いてー」

「はーい」

「おっ、良いね〜。パシャッ」

スマホカメラに向かってピースサインをする久留衣先輩を、激写。

「良いよ良いよー、萌音ちゃん。じゃあポーズ変えてみよっかー」

「はーい」

すちゃっ、と敬礼した久留衣先輩を激写。

「おっ、良いねぇ〜。次、うさ耳やってみてー」

「はーい」

両手を頭の上に乗せて、さながらうさぎのようなポーズを取った久留衣先輩を、激写。

「うーん可愛い!じゃあ次は両手でハートを作って…」

「はーい」

「おい、ちょっと待て」

モデルみたいに次々とポーズを取る久留衣先輩と、その久留衣先輩をスマホカメラで撮りまくる天方部長を。

佐乱先輩が、間に入って止めた。

「お前ら、何やってんださっきから」

「え?写真撮ってるだけじゃん」

「萌音はモデルじゃないんだぞ。勝手に撮るな」

「良いじゃん可愛いんだし。あ、そうか。自分の彼女を勝手に撮るな!ってこと?いやぁ仲良しだねー」

「…殴るぞ、お前」

佐乱先輩は、こめかみにピキピキと血管を浮き立たせていた。

自分の恋人が、部長とはいえ、違う男に次々と写真を撮られては。

彼氏として、佐乱先輩も黙っていられないらしい。当たり前。

「今すぐ、その写真のデータを消せ」

「分かった分かった。李優君のスマホに送っとくから。萌音ちゃんの可愛い写真を、自分だけで独占はしな、」

…ブチッ。

キレた佐乱先輩の鉄拳が、天方部長の脳天に炸裂した。

…あーあ…。

僕は見なかったことにして、勉強の続きに励んだ。
< 129 / 384 >

この作品をシェア

pagetop