小羽根と自由な仲間達
…5分後。

「どう思う?唱君。ちょっと萌音ちゃんを撮っただけで殴る?普通。萌音ちゃんだってノリノリだったじゃん。なぁ?」

涙目の天方部長が、弦木先輩に泣きついていた。

しかし、弦木先輩は非情だった。

「駄目に決まってるでしょう。同性ならともかく、異性の写真はアウトですよ。いくらクラスメイトとはいえ」

当たり前です。

「マジ?同性なら良いの?じゃあ、そこで勉強してる後輩君を撮ろう」

スマホのカメラをこちらに向けて、カシャカシャカシャカシャ、と連射する天方部長。

ちょ、何やってるんですかやめてください。

何で連射するんですか。

「そもそも、何で写真撮ってるの?」

と、首を傾げた久留衣先輩が尋ねた。

「そりゃ君、芸術研究部の活動の一環だよ。イモ版に失敗したからさー。今度は写真でも始めてみようかと思って」

成程、そういう経緯でしたか。

…天方部長、本当色んなものに手を出しますね。

確かに、写真も芸術の一分野ですが…。

素人が始めるには、少々ハードルの高そうな趣味のような気がする。

まず、それなりのカメラを用意するのが大変ですよね。

「スマホのカメラで撮るんですか?もっと、こう…一眼レフのデジタルカメラとか…」

「そんなお高そうなもの持ってねーし。どうせすぐ飽きて別の趣味に走るんだし、その為に買うのは勿体ないだろ?」

自分が飽き性であるという自覚はあるんですね。

それで、スマホのカメラを使おうと…。

「それに、最近のスマホカメラは充分高性能だろ?ご覧の通り…ほら。さっき撮った後輩君の写真。めちゃくちゃ高画質だぜ。眉間の皺までばっちり撮れてる」

撮らないでください。そして消してください。

「ったく…。色んなこと始めちゃ、すぐ飽きてやめるんだから…」

毒づく佐乱先輩である。

そして、くるりと久留衣先輩の方を向いて、説教を始めた。

「それから萌音。お前、誰彼構わずカメラを向けられたからってポーズを取るんじゃない」

「え、駄目なの?」

「駄目に決まってるだろ。何処の変態が見てるか分からないんだから」

天方部長も、その変態に入るんですか。

入りますね。

「でも、女の子達はよく写真撮ってるよ?」

「そいつらはブスだから良いんだよ。でも、お前は…」

「…萌音は?」

「え、あー…。うん…。まぁ、お前はその…顔だけは良いから…」

失言だったとばかりに、視線を逸らして言い淀む佐乱先輩。

「おいおい。素直に可愛いって言っちゃえよ」

意地悪くニヤニヤ笑いながら、天方部長が肘でつついていた。

ゲスい…。

「うるせぇ。茶化すんじゃねぇ」

「ひゅーひゅー!萌音ちゃん可愛いって。ひゅーひゅー!」

「ありがとう、李優。萌音嬉しい」

「ご馳走様でした」

…何だろう。この頭の悪そうな一連のやり取り。

今僕、それどころじゃないんで!そういうことは他所でやってもらえませんか!

…って、言いたい。
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