小羽根と自由な仲間達
部長のスマホの画面には、ぽやんとした可愛らしい笑顔で、こちらに向かってピースサインする女の子の写真が映し出されていた。

「どうよ?この子」

何で天方部長が得意げなんですか?

「はぁ…。えぇと、可愛らしい女性ですね…」

「だろ!?ベーシュちゃんマジで可愛いよなー」

ベーシュちゃんって名前なんですか?この女性…。

「この人が『frontier』なんですか?」

「この人が、って言うより…『frontier』の一人、って言った方が正しいな。『frontier』は5人グループなんだよ。ほら、これが他の4人」

と言って、天方部長は別の画像を見せてくれた。

そこには、さっき部長が自慢げに話していたベーシュさんというメンバーに並んで。

4人の男性メンバーが、互いに肩を並べていた。

はぁ。この人達が『frontier』。

「どうよ。美形揃いだろ?後輩君は誰推し?」

「お、推し…?」

「この中だと、誰が一番好きかって聞いてんだよ。どう?」

この中で…?と言われても…。

写真だけじゃ、判断の仕様がないですよね。

強いて言うなら…。ぱっと見、一番目を引くのは…。

天方部長最推しの、『frontier』紅一点のベーシュさんも気になりますけど。

「僕は…この真ん中の人が良いと思います」

と言って、僕は画像の真ん中に映る男性を指差した。

誠実そうだし。真面目そうだし。

端正な顔立ちで、明るく爽やかそうな印象。

「ほう。後輩君はルトリア推しか」

「ルトリアさんって言うんですか?この人…」

「おう。『frontier』のボーカルだよ」

と、天方部長が教えてくれた。

ボーカルって言うと…歌う人ですよね。

「じゃあ、この人がリーダーなんですか?」

「いいや、リーダーはこっちのミヤノって人。こっちもこっちでイケメンだよなー」

はぁ…。…そうですね。

「でも、自分が一番好きなのは、やっぱりなんと言ってもベーシュちゃんだな!」

そうでしょうね。

さっき、嬉しそうにスマホの写真見せてくれましたから。

「この、ちょっと間の抜けた顔が堪らないよなー。守ってあげたくなる感じって言うか?でも、噂によるとこの子、めちゃくちゃ力持ちらしくて、素手で釘を打てるレベルらしいんだよね」

素手で…釘?

それ、本当に人間ですか?

「めっちゃ可愛いよな!ちょっとウチの萌音ちゃんに似てるよなー」

「ほんと?萌音、この人に似てる?」

「おい、ふざけんな。萌音を何処ぞのアイドルなんかと一緒にすんじゃねーよ」

自分の恋人を別の女性と一括りにされて、黙っておけない佐乱先輩である。

そうですよね。自分の好きな人、大事な人は唯一無二ですから。

いくら姿形がちょっとばかり似ていたって、それは他人ですよ。
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