小羽根と自由な仲間達
…それで?

「この…『frontier』さんというグループがどうしたって言うんですか?」

「ライブだよ!年末に、この『frontier』の記念ライブが開催されるんだけどさ。熱狂的『frontier』ファンの自分は、絶対参加しなきゃいけないだろ?」

は、はぁ。そうなんですか?

絶対ってことはないと思いますけど…。

「それで、天方部長は参加するんですか?」

「…そのつもりだったんだけどな」

あっ。なんか、地雷を踏んでしまった感。

さっきまでテンション高く喋ってたのに、急激に表情が暗くなり、声が低くなった。

この様子だと…駄目だったんですね。

「問題は、チケットの争奪戦だよ。『frontier』はご存知の通り、超人気アーティスト…。ライブのチケットは、毎回秒で完売するんだ。ファンクラブ会員でさえそうなんだから」

ご存知の通りと言われても、僕はご存知じゃありませんでしたけど…。

ともかく、あまりに人気のアーティストの為に、チケットが販売されてもすぐに売り切れてしまって、入手困難なんですね。

「買えなかったんですね。天方部長…」

「そうなんだよ…。畜生、あの先公め!あいつが邪魔しなければ…!」

…先公?

先生のことですよね。学校の先生を「先公」呼ばわりは、良くないと思います。

…でも、何で先生が関係あるんですか?

そういえばさっき、スマホを没収されたとか何とか…。

「あの…先生に邪魔されたって…?」

「あぁ。チケット販売開始が今日の午前10時からだったんだよ」

授業中ですね。2時間目の授業中…。

「机の前に教科書とノートを立てて、こっそりスマホ出して、チケット争奪戦に参加してたんだけどさー」

「…」

「あまりに熱中し過ぎて、先公が近寄ってきたのに気づかなかったんだよ。現行犯逮捕で捕まっちまった。畜生」

「…」

「あの先公と来たら、授業中にスマホ出すなって偉そうに説教して、自分に恥をかかせた上に、放課後までスマホ没収だって、勝手に自分のスマホを持って行きやがったんだぜ!?これもう窃盗だろ」

「…」

「で、さっき返してもらったんだけどさ。チケットはとっくに完売御礼!畜生、あの先公が邪魔しなければ買えてたかもしれないのに!」

「…」

「酷いと思わないか?なぁ。楽しみにしてたのに、ライブに行けないのはあの先公のせいだぜ。どうやって罪を償ってもらおうか」

「…」

「…後輩君、さっきから何で黙ってんの?」

…あぁ、済みません。

天方部長のあまりの馬鹿馬鹿しさに、呆れて言葉が出てきませんでした。

とりあえず、一つ言っても良いですか?

「…それ、ただの自業自得では?」

「酷い!後輩君までそんなこと言うのか?信じてたのに…!?」

そうですか。信頼を裏切って済みませんね。

でも、僕は発言を改めるつもりはありません。

だって、本当に自業自得ですから。
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