小羽根と自由な仲間達
それどころか、天方部長は変なスイッチが入ってしまったらしく。

「良いか?自分にとって『frontier』は、心の支え。まさに生き甲斐なんだ!」

…熱く語り始めてしまった。

「リアル『frontier』を目にする機会なんて、滅多にないのに…!それをあの先公に邪魔されたばっかりに…!絶対許せねぇ。あいつの血は何色だ?」

先生を「あいつ」呼ばわり。

心配しなくても、ちゃんと赤いですよ。

授業中にスマホを触る、天方部長が悪いです。どう考えても。

「やっぱりムカつく。復讐しに行ってやろうか」

「…復讐って、何するんですか?」

「職員室の椅子に、アロンアルファ塗っといてやる。座ったが最後、ケツが椅子にくっついて離れないように」

非常に地味な嫌がらせですね。

やめましょう。

「あんな先公、一生ケツに椅子をくっつけたまま生活すれば良いんだ」

真顔で何言ってるんですか。天方部長。

「わー。何だか面白そうだねー」

久留衣先輩も。手を叩きながら何言ってるんですか。

駄目に決まってるでしょう。面白くありませんよ。

「そんなことしたら、今度は停学ですね」

「それどころか退学だろ」

弦木先輩と佐乱先輩が、冷静に呟いた。

今度は、もうスマホ没収どころじゃ済まないでしょうね。

「あぁ、『frontier』…。ベーシュちゃん…見たかった…」

「…」

テーブルに突っ伏して、半泣きで呟く天方部長。

…分かりましたよ。

部活が終わってから渡そうと思ってましたけど…そんなに落ち込んでるなら、今渡しますよ。

ヤケになって、本当に職員室にアロンアルファを仕込みに行ったら、取り返しが付きませんもんね。

「…天方部長」

「こうなったら…更に『frontier』仲間を増やすしかない。後輩君に『frontier』の画像を毎分置きに送りまくって、サブリミナル効果で強制的に『frontier』ファンに…」

「やめてください」

ただの悪質な嫌がらせじゃないですか。

「それより、天方部長。これ、あげます」

「ん…?何?」

僕は、先日加那芽兄様にもらったリング・ブレスレットの小箱と。

それから、加那芽兄様に頼んで、昨日手に入れたもう一つのプレゼントを、天方部長に渡した。
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