小羽根と自由な仲間達
ちょ…ちょっと、意味が分からないんですけど。

天方先輩、突然何を言い出すんだ。

きっと、これには他の先輩達も困惑しているに違いない、と思ったが。

「上手いこと勧誘出来て良かったですね」

「うん。新入部員は絶望的かもしれないって、李優とも話してたんだ」

二人共、何やら安堵したようにそう話している。

駄目だ。僕の味方になってくれなさそう。

さっきの先輩…。佐乱先輩が戻ってこないだろうか。

あの人は話が通じそうだし、あの人なら、何がどうなってるのか僕に説明してくれるかもしれない。

すると。

「戻ったぞ」

噂をすれば何とやら、佐乱先輩が戻ってきた。

よ、良かった。

「お、李優君お帰り。提出してきてくれた?」

「あぁ。行ってきたよ」

「さんきゅー」

…そんなことより。

「さ…佐乱先輩。助けてください…」

「は?何から?」

…何からだろう?

僕にも分からないや。

「その…何故か僕、勝手にこの部活動に入部させられそうになってて…」

僕、入りますなんて一言も言ってない。

ただ、廊下を歩いていたら突然拉致されて、連れてこられただけで…。

しかし。

「…は?入部させられそうってどういうことだ?」

佐乱先輩は、不思議そうに頭を捻った。

「え?いや…言葉通りの意味ですけど…」

「入部させられそう…も何も、ついさっき入部届、提出しただろ?」

!?

「部活動委員会に持っていったから、お前はもう、立派な部員の一人だぞ」

ちょっ…。

…え?は?

あまりに意味が分からなくて、頭が真っ白。

…入部届なんて、僕、書いた覚えないんですけど…?

「…ど、どういうことなんですか…?いつの間に…?」

我ながら裏返った声で、恐る恐る、天方先輩に尋ねた。

すると。

「え?さっき名前の綴り聞いたじゃん。あの時」

あっ、あの時か!

「すんなり綴りを教えてくれたから、了解したもんだとばかり…」

「ち、ちがっ…」

て、てっきり興味本位で聞いたものとばかり。

あの時既に、(無断で)入部届に名前を記入していたなんて。

詐欺に遭ったような気分だった。

「ぼ、僕は…入部するなんて、一言も…」

「まぁ良いじゃん。これも何かの縁ってことで。仲良くしようぜ」

天方先輩。何で勝手に決めてるんですか?

「ようこそ、じゆうけ…。…えっと、今ウチ何部だっけ?」

「料理研究部ですよ。自分で作った部活の名前を忘れないでください」

「おぉ、それだそれ。後輩君。料理研究部にようこそ!」

にこやかに、天方先輩に握手され。

何故か、物凄く勝手に、成り行きで、僕の所属する部活が決まってしまった。
< 16 / 384 >

この作品をシェア

pagetop