小羽根と自由な仲間達
「小羽根君、どのジュースが良い?」

久留衣先輩が、ジュースのペットボトルを机に並べていた。

「えっと…どんなジュース買ってきたんですか?」

薄暗くてよく見えないんです。

「んっとねー、皆好みが色々あると思ったから、全部違う種類の買ってきたの」

「そうですか…。その方が良いですね」

「抹茶サイダーと豆乳サイダーとコーヒーサイダーと、ココアサイダーとパクチーサイダーのどれが良い?」

「…何で普通の飲み物が一つもないんですか…?」

遊んだんですか。遊んだんですか?そのラインナップ。

普通の紅茶とかお茶はないんですか。

とりあえず、パクチーサイダーじゃなきゃもう何でも良いです。

「…ごめんな、こいつ…。決して悪気はないんだ」

首を傾げている久留衣先輩に代わって、佐乱先輩が謝ってきた。

いや、別に佐乱先輩が悪い訳じゃありませんから。

「じゃあ、豆乳サイダーあげるね」

じゃあ、ってどういう意味ですか。、

「ど、どうも…。ありがとうございます…?」

「どういたしましてー」

…美味しいの?これ。

よくよくペットボトルのラベルを見たら、本当に『サイダー豆乳味』って書いてある。

とても美味しそうには見えないけど…。買ってきてくれた手前、要りませんとも言えないし。

…まぁ、パクチーサイダーよりはマシだと思おう。

僕、あんまり炭酸飲料得意じゃないんだけどな…。 

試しにペットボトルを開けて、ほんのちょこっとだけ、口に含む。

意外なことに、豆乳とサイダーの絶妙なハーモニーが…!…なんてことはなく。

しゅわしゅわしたサイダーの中に、まろやかな豆乳の味。

うん。合わない。

気になった人は、サイダーと豆乳を混ぜて、試しに自分で飲んでみて。

「はい、李優にもココアサイダーあげるね」

「はいはい、どうも…」

こちらも変な味のサイダーをもらっている佐乱先輩だが。

変な味でも、可愛い恋人が買ってきてくれたもの。

遠い目をして、ココアサイダーを受け取っていた。

…苦労してるんだなぁ。

「よしっ、じゃあ準備出来たな!観ようぜー」

そこに、何やらDVDのパッケージを手にした天方部長。

「観るって…何を観るんですか?」

スクリーンとプロジェクターをわざわざ借りてきたってことは、多分何らかのビデオを観るんだろうとは思ってた。

芸術研究部が観るべきビデオ…。

何だろう。有名な画家の一生を描いた映画とか?

それともちょっと趣向を変えて、演劇やミュージカルのビデオとか?

そういうのも良いですよね。

昔、加那芽兄様に連れられて、一緒にミュージカルを観に行ったことがある。

あれは本当に素晴らしい作品だっ、

「そりゃ、これだよ」

と言って、天方部長が見せてくれたDVDのパッケージを見て。

僕は、思わず悲鳴をあげそうになった。
< 182 / 384 >

この作品をシェア

pagetop