小羽根と自由な仲間達
しかし、先輩達が見ている手前。

僕だけ「嫌です」とは言えなかった。

そうっと、恐る恐る、雑誌の写真に視線を落とす。

今度の写真には、男性が一人、写っていた。

アパートらしき部屋の一室で、カメラを見つめてピースサインしている。

恐らく、新居に引っ越してきたばかりなのだろう。

部屋の中は空っぽで、家具も何も置いていなかった。

引っ越し祝いの一枚…といったところだろうか。

相変わらず、両目にモザイクがかけられている。

一見したところでは、何もおかしなものは写っていない。普通の写真に見えるが…。

「どうだ?気づいたか、後輩君」

「いや…分かりませんけど…」

と言うか、分かりたくもありませんけど。

何なんですか。また窓の外に何か写ってるのか?

恐る恐る、窓の外を注視してみたけど…何も変なものは写ってない。

じゃあ床か?床に顔らしきものが…とか。

「ヒント、押入れ」

と、天方部長。

「押入れ」の一言で、身体がビクッとするようになってしまった。

あの映画の罪は重い。

「お…押入れ…?」

写真の中で、押入れを探す。

あった。

写真の中央でピースサインをしている男性の左に。押入れが。

そして同時に、何故この写真が心霊写真とされているのかを理解した。

「ひっ…」

思わず、怯えの声を上げてしまった。

押入れの入り口が、ほんの少し開いていて。

そこから、真っ白な人の手のようなものが、ベタッ、と伸びているではないか。

これは気持ち悪い。

「ふっ。気づいたようだな。そう、押入れの中に居るんだよ」

何で天方部長がドヤ顔なんですか?

「この写真が『オシイレノタタリ』の元ネタなんですかね」

「さぁ…。偶然じゃねぇの?」

先に気づいていた弦木先輩と佐乱先輩は、特に怖がる様子もなく、冷静に分析。

「押入れの中で、誰かがかくれんぼしてるのかな」

久留衣先輩はというと、相変わらずこの写真を心霊写真だと認識していない。

そんなかくれんぼは遠慮してください。

「や、やめましょうよ…こんな気持ち悪い写真を見るの…」

僕もう、一生写真撮れない。

背後と押入れが気になって。

「何で?面白いじゃん」

「面白くないですよ…」

心霊写真が面白いなんて、どんな趣味してるんですか。

すると、佐乱先輩が。

「まぁ、でも嘘臭くはあるよな、この写真」

と、言った。

…え?嘘臭い?
< 197 / 384 >

この作品をシェア

pagetop