小羽根と自由な仲間達
「よーし、それじゃ早速調べてみよう。えぇっと、yourtubeを開いて…動物の癒やし動画、で検索っと…」

動物の癒やし動画かぁ。

テレビとかでも、よくありますよね。

人間の真似をする犬とか、餌をねだって擦り寄ってくる猫とか。

あれ可愛いですよね。

見てて癒やされると言いますか。

でも僕がそう言うと、加那芽兄様はいつも、「小羽根を見てる方が癒やされるよ」って言うから。

加那芽兄様にとって僕は、ある種のペット的な存在なのかもしれない。

別に良いですけどね、ペットでも…。可愛がってもらってるのは事実だから…。

人間扱いして欲しいだけで…。

「おっ、あったあった。いっぱいあるじゃ〜ん」

yourtubeにも、当然そういう動画はたくさんある。

犬も良いけど、僕は個人的に犬より猫派なので、ねこちゃんの可愛い動画があれば嬉し、

「…はぁっ!?」

僕はタブレットを覗き込んで、思わず目が点になった。

動画の。サムネが。

てっきり可愛い猫の動画だと思ったのに。

巨大なヘビを肩に乗せて、笑顔でピースサインしている男性のサムネだった。

「ヘビの桃子ちゃんチャンネル、だってよ」

何でそんなに、無駄に可愛い名前なんですか?

桃子ちゃん、ってことはメスなんだろうか…。って、関係ないですよそんなことは。

「桃子ちゃんの餌やり動画だと」

「ふーん。ヘビって何食べるんですか?」

「あ。ネズミだー」

動画主らしき男性が、ピンセットに真っ白なマウスの尻尾を摘まみ。

それをヘビ(桃子ちゃんという名前らしい)の前に出して、ぷらぷらと振った。

ひぇっ。

すると、マウスを見つけたヘビが、にょろにょろとこちらに寄ってきた。

ひぇっ。

ヘビはぐぱっ、と口を開け、マウスをがぶり。

ひぇっ。

ゆっくりゆっくり、ヘビの口がこれでもかと広がり、マウスが飲み込まれていく。

ひぇっ。

「うぉぉー。やべー」

「噛まずに丸呑みするのか…。凄いな」

「顎めっちゃ強いですね」

まほろ部長も李優先輩も、さっきまで香水に夢中になっていた唱先輩までも、いつの間にかこちらに来て。

皆揃って、ヘビ動画に興味津々。

さすがに、女性である萌音先輩はドン引きじゃないか、と思ったが。

「ヘビだー。可愛いねー」

目をキラキラさせて、誰よりもヘビ動画を楽しんでいた。

か、可愛い?これが?

耳を疑う、とはこのことですよ。

人生で生まれてこの方、ヘビが可愛いと思った試しがない。

それどころか、この動画主。

餌やりシーンのみならず、ヘビと楽しく遊び始めた。

ヘビは、しゅるしゅると動画主さんの手首に巻き付いた。

ひぇっ。

そのままヘビが手首を締め付けて、骨が折れるんじゃないかと心配したが。

動画主は、その状態のままで楽しそうにピースサイン。

あ、ここサムネの画像…。

…ひぇっ。
< 263 / 384 >

この作品をシェア

pagetop