小羽根と自由な仲間達
ぶっちゃけ、正直、もう観ていられない。

タランチュラが好きな人には悪いんですけど、僕はもう無理ですよ。

それなのに、まほろ部長達は、あろうことかこのタランチュラを「可愛い」と言い。

動画主さんが、可愛いタランチュラの鈴子ちゃんと戯れている動画を、立て続けに何本も視聴。

タランチュラを平気で手のひらに乗せて、「可愛い〜」なんて言ってるんですよ。

一体何が可愛いんですか。
 
あんなもの(失礼)が、自分の手のひらに乗ったら…。

そう思うと、僕は思わず身震いしてしまった。

僕だったら、壮絶な悲鳴をあげて、手のひらを思いっきり振り払うに違いない。

無理です。気持ち悪いものは気持ち悪いし、怖いものは怖いんです。

手のひらに乗せて許容出来るのは、よく家の中に出没する、足の小指の爪サイズのちっちゃいクモが精一杯です。

それだって、素手では嫌ですよ。

…それなのに、先輩方は。

「いやぁ可愛かったな〜。やっぱり動物の動画は癒やされるな!」

何処が?

恐怖が募っただけですよ。僕にとっては。

「可愛いね、李優。萌音もタランチュラ飼いたい」

女性である萌音先輩でさえ、この発言。

で、李優先輩は。

「はいはい。萌音がもう少し大きくなったらな」

とのこと。

大きくなったら飼うんですか。そうなんですか?

駄目だ…。僕にはついていけない…。

さっきから、背中がむずむずしてる。

そんなはずないのに、背中にタランチュラがついてるんじゃないかって。

トラウマですよ。もう。

「もっと動画観たいけど、続きは明日だな」

「明日は何を観ます?」

ちょ、今度こそ。今度こそ猫とか、犬とか、ハリネズミとか。

そういう可愛い小動物系をお願いしま、

「これが良いんじゃね?おすすめ関連動画に出てる。可愛いイグアナ!」

「おぉ、良いですねイグアナですか」

「イグアナの雪子ちゃんだって。可愛い名前だねー」

…神様。

僕、明日こそは部活、休んでも許されますよね…?
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