小羽根と自由な仲間達
「生地にも生クリーム、ドーナツ生地の間にも生クリーム、トッピングにも大量の生クリームを山盛りにしたドーナツなんだが」

「そ、それは凄いですね…」

「そのドーナツ、生クリーム味、イチゴ味、チョコ味、ピスタチオ味の4種類があったんだが、4種類×3セット食べてた」

気の所為だろうか。想像しただけで、胸焼けが。

大変失礼なんですが、萌音先輩はバケモノの類なのでは…?

「そ、それは…。…無理ですね…」

「あぁ…。俺も、目の前で見てるだけで吐きそうになった」

と、真顔の李優先輩。

よく我慢出来ましたね…。

「しかも、飲み物はオレンジジュースだった」

「…うわぁ…」

甘いものを食べながら、甘いものを飲むとは。

そこは、飲み物だけでも苦味のあるコーヒーを頼んで、口の中で砂糖の甘さを中和する、とか…。

甘いものって美味しいですけど、ずっと食べ続けていると飽きると言いますか。

段々、くどくなってくるんですよね。

だから、スイーツバイキングには、口の中をリセットする為に、サラダや、塩味のポテトフライが置いてあることが多い。

僕も加那芽兄様と一緒にスイーツバイキング、行ったことあるので知ってるんです。

「ちなみに、李優先輩はどんなドーナツを…?」

「俺もチョコドーナツとか、オールドファッションも食べたけど。胃もたれしないように、シンプルな黒糖味のパン・デ・リングとか、カレー味のパイを途中で挟んだりしてたよ。飲み物はブラックコーヒーで」

偉い。偉いですよ李優先輩。

それが賢いドーナツビュッフェの攻略法です。

「でも、萌音先輩は…」

「あぁ…。俺の忠告を聞かずに、ひたすら生クリームてんこ盛りドーナツを食べてた」

あぁ…萌音先輩、なんてことを…。

あなた、本能のままに生きてますね。

生クリームは確かに、誘惑の多い食べ物なんですが。

だからって食べ過ぎると、段々本性を表すって言うか…。

牙を剥いてくるんですよね。

皆さん、生クリームにはご用心。

「それ…萌音先輩は、食べ切ったんですか…?」

僕だったら、多分最初の3つくらいでギブアップ宣言しそうだが。

「あぁ。完食してた」

食べ切ったんだ。凄い。

食べ放題で、取りたいだけ取って残す、っていうのは一番顰蹙を買うタブーですからね。

取ったのなら、残さず食べましょう。

それにしても萌音先輩、そんな生クリームてんこ盛りのドーナツを、えぇと、4種類×3セットだから…。

…計12個のドーナツを、一人で食べきったことになる。

…萌音先輩、すごっ…。

「ちなみに、その後も別のドーナツを食べてたからな」

「ほ、本当に凄いですね…」

一人で一体、何個のドーナツを食べたんですか?

食べ放題に行ったら、意地でも元を取ろうと頑張るタイプ?

元を取ることに固執するより、美味しく食べ放題を楽しむことが大切だと思うんですよ。僕は。

「あいつ、元々大食いだからな」

「え、そうなんですか…」

「あぁ。一食でコンビニのおにぎりを15個くらいは食べる」

「へぇ。それはすご…。…じゅ、15個…!?」

「それだけ食べといて、『腹八分目だよ』とか言ってる」

そ、そんな…。

それじゃ、萌音先輩が本気を出したら…コンビニに売ってるおにぎり、全部買い占めることも夢じゃないですね…。

…買い占めは他のお客様に迷惑なので、やめましょう。
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